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だが、そんな理想を頑なに彼は拒んだ。父親が豹変した小学四年生の頃まだ彼は正常であった。彼には友達もいた。だが、彼が父親のことを打ち明けると、友達は今までとは全く以て異なる態度を示した。友達は情報を撒かなかったが、この一件を以て遠ざかるようになってしまった。友達は信用できない。これが彼の行き着いた終着点であった。それっきり他の友達とも距離を置き、彼は家にて疑問を呈すれば返ってくる歴史と読書に走ったのだ。
次の日、彼は本に書いてあることを試してみた。いつものように寝ているふりや読書の時の肘などを支えている相棒とも言える机から離れたのである。まずは教室でいつも二、三人で固まっている所謂二軍というグループだ。結果は大成功。彼はいつもと慣れぬことをしているにも関わらず、其れを悟られぬように話した。彼はその日からたちまち休み時間になると彼の席に数人が集まるようになった。相槌の打ち方や、自らの空想の出来事を本物のように伝える方法。全てにおいて彼は長けていた。それっきり彼は図書館に行くのをやめてしまった。
夕闇の蛙の鳴き声が常に響く帰り道、彼の元々いた友達である水野は、
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