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その器用さは社会人になっても健在であった。社会人となった彼は上司とは程よい関係を保ち、同僚とも最高の関係、つまり、彼の中の「理想の関係」を完成させたのである。彼は人間関係の極意を本を中心に理解していた。全くミスをしなければそれはそれで嫉妬されるためミスをして良いところではそこそこミスをしてその度ジョークを使い、返って場を盛り上げさせた。これは俗に言う、「道化」と呼ばれる者ではないだろうか。他にも、彼がそこそこの企業に入れたこともあり、両親と離れる事もできたのである。彼が巣立った事で、実家からは、父と母が仲直りをしたと言う話の葉書が届いた。そうなれば、彼もそこそこの頻度で実家へコーヒーゼリーを三つくらい買って帰省したそうだ。この時の彼は順風満帆といえる生活を送っていたのだ。
彼はその場においていつもその老獪さ、狡猾さを自らの「変顔」で隠しながら立ち回ってきたのである。
彼はどこまでも評判や理想を重んじた。その為、彼と距離の近い者に彼を聞けば、必ずしも、人間として優れている、と。だが、彼ともう距離を置いている者に彼を聞けば返答は変わってくる。
「奴は変顔をつけている。」
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