変顔

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 途端に海外企業のトップは激怒し、彼の知らぬケースまさかのあり得ぬ事態に、彼の変顔の技術は限界を超えた。彼は何もできなかったのである。只々、謝ることしか出来なかった。だが、その謝罪にはまるで心がなかった。だが、彼の変顔の持つ考えられている物とも違った。この日を境に彼は変わってしまった。彼は途端に仕事が出来なくなり、と言って分からぬ位に媚を売ることも出来なくなり、そして、会社から見捨てられたのである。だが、誰も彼を助けることもせず、到頭、彼は旧友の水野を頼ったのである。  その夜は月の出でぬ雨の降った夜であった。そのネオンの朧な光と夜の闇の中から、水野は現れた。 「久しぶりだな。どうしたんだ。」彼はその水野の変わらぬ話し方変わらぬ声に感動した。 「水野…………」彼は嗚咽と共に起きた事を全て話した。 「そうか、丁度これくらいだったな。お前が変わってしまったのも。梅雨の雨がずっと降ってる時だった。俺はお前に忠告をしておいた。だが、それを否定したのもお前だろう。そして俺と距離を置いた。」 「いや、あれは……」彼の弁明をしようとする声は日夜問わず多くの人が行ききする此処では水野には届かなかった。
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