鈴木和輝

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 「昨日やっぱりちゃんと酔い冷ましさせてから眠らせるんだった。」  お湯を沸かしながらコーヒーを入れる準備を始めた梨華は、後悔したように呟いた。昨日俺がバイトに向かう前、確か梨華と海斗は酒を飲みながらゲームをして騒いでいたっけ。  「ソファで寝落ちしそうになったから叩き起こそうとしたんだけど、途中で面倒くさくなっちゃって。」  「あいつ酒弱いくせに飲もうとするよな。」  「そうずら(そうでしょ)?馬鹿だよ、ほんと。」  溜め息を吐きながら、梨華はインスタントコーヒーに沸いたお湯を注いだ。すり潰された豆のほろ苦い香りが俺の鼻孔をくすぐる。熱さで唇と舌を火傷しないように気をつけながら、湯気のたつコーヒーをすーっと口に流し込んだ。  「飲む?」  一連をぼうっと見ていた俺に、梨華はそう聞く。  「いらん。どーせ寝ぇへんけど。」  夜勤終わりで帰ってきても、俺はいつも寝ることが出来ない。最後の忙しさでアドレナリンが出ているせいか、自然の目覚ましである太陽の光のせいか。  「今日はもうバイトないの?」  「午後からある。レストランの。」  「無理にでも寝た方がいいんじゃない?」  アルコールに対して以外健康志向の梨華は、大して睡眠を取らずとも動ける俺をいつも心配する。その度俺は、大丈夫、といつもより大きめの声で答えている。
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