12人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「昨日やっぱりちゃんと酔い冷ましさせてから眠らせるんだった。」
お湯を沸かしながらコーヒーを入れる準備を始めた梨華は、後悔したように呟いた。昨日俺がバイトに向かう前、確か梨華と海斗は酒を飲みながらゲームをして騒いでいたっけ。
「ソファで寝落ちしそうになったから叩き起こそうとしたんだけど、途中で面倒くさくなっちゃって。」
「あいつ酒弱いくせに飲もうとするよな。」
「そうずら?馬鹿だよ、ほんと。」
溜め息を吐きながら、梨華はインスタントコーヒーに沸いたお湯を注いだ。すり潰された豆のほろ苦い香りが俺の鼻孔をくすぐる。熱さで唇と舌を火傷しないように気をつけながら、湯気のたつコーヒーをすーっと口に流し込んだ。
「飲む?」
一連をぼうっと見ていた俺に、梨華はそう聞く。
「いらん。どーせ寝ぇへんけど。」
夜勤終わりで帰ってきても、俺はいつも寝ることが出来ない。最後の忙しさでアドレナリンが出ているせいか、自然の目覚ましである太陽の光のせいか。
「今日はもうバイトないの?」
「午後からある。レストランの。」
「無理にでも寝た方がいいんじゃない?」
アルコールに対して以外健康志向の梨華は、大して睡眠を取らずとも動ける俺をいつも心配する。その度俺は、大丈夫、といつもより大きめの声で答えている。
最初のコメントを投稿しよう!