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「じゃあ今度絵しりとりしようぜ!そしたら和の絵、見られるだろ?」
さっきの慌てぶりはいづこに、片耳にワイヤレスイヤホンをつけ、仕事用の黒い長袖とズボンを身にまとってきた海斗が話に入ってきた。
「あれ、走んに行かなくていいの?」
梨華は聞く。
「ああ、今日はいいや!今海の音聞いて動画見たらスイッチ入った!」
波の音を聞きながら朝からハキハキと喋る海斗は、やはり生粋の朝方人間だ。どちらかと言うと朝の弱い俺にとっては尊敬でしかない。
「てか何で絵しりとり?普通に描かせればいいじゃん。」
富子は話を戻す。
「そっちの方が面白いだろ!」
大学で知り合った当初から海斗の印象は変わっていない。とにかく元気で声がでかくて、何より楽しいことが好きな青年だ。真逆の性格の俺とよくシェアハウスするまでになったものだとつくづく思う。
「じゃあ今度、絵しりとりね。みんなの画力試されるよ。」
何故かノリノリの梨華も楽しいことが好きな人だ。この年で絵しりとりの約束なんてと世間は思うだろうが、いつまでも子ども心がなくならないのがこの二人。
「仕方ないなぁ~。私の努力の成果も見せてあげるよ。」
元々絵の上手い富子は自信ありげに鼻を高くした。その二人に便乗する富子と俺もまた、子どものような心をまだなくしていない一人なのかも知れない。
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