鈴木和輝

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 元々口数が少なく寡黙な俺は、恋人どころか友だちすらろくにいたことがない。暗くて目つきも悪い俺に好んで近づいてくる人などいるはずもない。  そんな時大学に入りこの三人に出会った。  この出会いも偶然だった。他学科の学生も受ける授業でたまたま同じグループになり、段々と仲が良くなっていったという訳だ。  初めは正直面倒だと思っていた。特に梨華や海斗に関しては、俺と性格が違いすぎるせいで遊びに行っても疲れを感じるばかりだった。だからSNSのグループで遊びに誘われたのを一度断ってからは適当な理由をつけて誘いに乗らなくなった。  多分そのうち誘われんくなるやろ。  そう、期待していた。  だが、それを続けていたある日。海斗から個人的にメッセージが送られてきた。  『俺ら、もしかしておまえに嫌なことした?だったらごめんな。』  それを見た瞬間、俺は後悔した。  違う。そうやない。  自分の都合で嘘を吐き、誘いを断り続けていた。ただそれだけなのに、俺は人に謝らせてしまったのだ。  俺はすぐに事情を説明した。海斗だけでなく、他の三人にも。  悪いのは全部俺だからということを。  すると三人は今度はゲームでもするかと、今までのアウトドアな誘いとは違う、家の中での遊びも提案し始めたのだ。  特にゲームや映画が好きという訳でもないが、俺が最も疑問だったのはなぜそこまでして俺を誘おうとしているのかと言うことだった。  それを聞くとみんなは答えた。 『だって、和と話すの、楽しいから。』  今までそんなことを言われたことのない俺にとって、その言葉は何よりも暖かく感じた。  それからだ。俺がみんなといるようになったのは。
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