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花に盲目
「……っクソ。何処に、……今、何処に居るんスか」
突然、彼女である花織優衣が居なくなった。
ゆっくりとスマホを握りしめては、オレが送った最後のメッセージをなぞる。
頭を抱えて、その場に蹲ってしまう。
どうして、なんで。
脳内は、その言葉で溢れかえっては埋め尽くされている。花のように可憐に笑っては、オレのことを大好きだって言ってくれた大事な彼女は一体何処に居なくなったというのか。
学校内では、あらかた走り回って。それでも、皆特に聞いていないのか首を横に振るだけだった。
彼女、優衣くんと仲が良い友人でもある楽阿見偉智も城戸朱衣さえも彼女が何処へ消えたのかわかなかった。教師にそれとなく聞いてみたが、個人情報であるために言うことは出来ないと言われる始末。
あの言い方では、おそらくなにか。家族関係が関わっているんだろう。
「オイ、來李」
「なんスか、玲央さん。……今日のオレ、あんまし調子が良くないんであまり」
「その辛気臭せぇ顔をどうにかしてこい。……ほらよ。さっさと迎えに行ったらどうだ」
オレに何かの紙を突きつけて来たのは、先輩でもあり寮長でもありお世話している人でもある皇玲央。中々、紙を受け取ることをしないオレにしびれを切らしたのか鬱陶しそうの顔を歪めては机の上に置いて何処かへと立ち去って行く。
普段のオレであれば、授業にサボるなとかちゃんと教科書は持っていけだの言うことが出来たのかもしれない。
優衣くんが姿を消して数日、どうにもオレは誰がどう見ても分かるほどに弱ってしまっていたのだ。
「これは……」
どこかの住所が書かれている紙を見て、そっと目に光が戻ってくる感覚を感じる。
どうやら、玲央さんは弱っているオレを見かねて何かを調べていたのだろう。流石、それなりの家の出の者でもある。やることなすことが大胆過ぎて、脳内の処理が中々追いつかない。
おそらくこの紙に書かれている住所らしき場所に行け、ということなのだろう。
「もしかすると、此処に優衣くんが」
居るのかもしれない。
だが、居ないかもしれない。……それでも、オレの中で行かないという選択肢はとうになかった。そっと住所が書かれている場所を調べるためにスマホを持ち直して調べ始める。
この学校がある場所ではない。そもそも、県が違うのだ。此処は東日本に対して、書かれている住所は西日本の住所。オレの記憶が正しければ優衣くんは通学生だ。なので、実家もこの東日本だとばかりに思いこんでいたがそうではないのかもしれない。
「善は急げッスね。……まぁ、この距離だったら明日にでも行くしかないッスね」
今いる場所から、住所の書かれている場所までは早くても三時間、四時間程度は掛かるほどだ。それも、県をまたぐだけで。その後も、電車などを乗り継いでいく必要があるので、半日は潰れることを覚悟しなければいけない。
いつか、優衣くんと一緒に長期休暇の時に旅行とか行けたらいいなと思って溜めていたお金がまさか此処で役に立つになることになるとは思いもしなかったが。彼女の為に使うことには変わりはないので、対してそこまで大きな違いはないのかもしれない。
「てか、……この住所にあるのってでっけぇ日本家屋じゃん。何で、優衣くんがそんなところに」
その時に、吁オレって優衣くんのことを何も知らないんだなと思った。
もしかすると、認めたくないが優衣くんのことを好きだった同級生であり顔見知りの卯月翡翠の方が知っているのではないかと思わせる程だ。まぁ、あの人が全て知ってる情報は合法的なものとは言い難いが。
「まさか、優衣くん。玲央さんレベルのオジョーサマだったりすんの……?」
思わず口角が、引きつってしまったのが分かった。
まぁ、だから何だってことはないのだが。
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