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未来が涼子に託した炊飯鍋のコピーは採用されて、皆の納得できるものが完成した。
納品後、先方からは、郷愁を感じさせる映像美に炊飯鍋完成までの日々が重なって、視聴後に自然と拍手が起こり即決だったと連絡があった。
あの日の事情を知らない石原と和田は、思い詰めた様子で謝罪する未来の様子に恐縮し、未来と同じ場面に出くわしていた涼子は、未来の目を真っ直ぐ見て言った。
「無責任に仕事をすることは許されないことだけど、誰でも出来ない時はある。そのリスクを減らそうとして、大切なものから逃げたり手放したりしないで。大切なものは弱みにじゃなくて強みにした方が、あなたもあなたの大切な人も幸せだと思うから。」
涼子の言葉は、項垂れたまま深みに吸い込まれそうになっていた未来の目を覚ましてくれて、気持ちを引っ張り上げてくれた。
「お待たせ、行こうか。」
チェックインを終えた青島が、笑顔を浮かべて立っている。
未来も笑顔で返事をすると、つい最近訪れたばかりの建物を奥に向かおうとしたが、その予想に反して、青島は先程入ってきたばかりの入り口に向かった。
そして客室に向かう階段を見ながら、不思議そうな顔をしている未来の手を取ると、青島はそのまま外に出た。
「青島様、お荷物をお預かりします。こちらへどうぞ。」
待ち構えていたスタッフは二人の手から荷物を受け取ると、停車しているカートの後ろに乗せた。
「今から見学ですか?」
促されたままカートの後ろに座った未来は、青島に尋ねた。
「言わなかったか?コテージに泊まるんだ。」
未来はきょとんとして、青島を見た。
「二泊、ゆっくりしよう。」
そうして二人きりになった青島は、部屋を見ようともせず真っ先に未来を抱き寄せると、唇を重ねてきた。
未来の体調が良くなったあとも連休前で忙しくて、結局、今日まで満足に触れる時間はなかったのだ。
長いキスの後、青島の唇は未来の首筋を這い、服の中に滑り込ませた指でなめらかな肌をなぞると、一気に服を脱がせた。
「宏さん、待って。シャワーを…」
恥じらいながら抗う姿は、青島の欲情を駆り立てるだけで、頼りなく抵抗を続ける腕を取り、抱き締めるように後ろ手にしてから、全てを剥ぎ取ると、差し出された胸に食らいついた。
部屋の入り口をオレンジ色の電球が照らし、白い肌に唇が触れた所からほんのりと痕が残る様は艶かしく、体は反応するのに、声を出すまいと耐える未来の表情は悩ましい限り。
「会わないと言われて、あらぬ疑いをかけられて、ここまで来て拒むなんて許さない。」
露わになった肌を優しく咥えながら、腹に据えかねていた不満をぶつけて責めた。
「ごめんなさい。」
吐息混じりの未来の謝罪に、不敵な笑みを浮かべた青島は、未来の体を壁に向かうようにして立たせると、その反動で壁についた未来の手を、上から押さえた。
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