余暇

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飲んで、食べて、抱き合って、いつの間にか夜を越えていた。 カーテンを開ける音で目が覚めて、大きな窓から柔らかい光が射し込むと、シーツを握りしめながら未来は体を起こした。 「何時ですか?」 青島の後ろに見える緑は、起き抜けには眩し過ぎて、目をしばたたかせながら未来は聞いた。 青島はそんな未来の側まで来ると、そっと髪に触れてキスをした。 「何時だろうな。そんなこと気にしない日があってもいいんじゃないか。」 青島の腕の中で、いつ眠りに落ちたのかも覚えていなかったが、寝不足なのは明らかだった。 「とりあえず、すっきりしたいです。」 そう言ってシャワーを浴びて出てきた未来を見て、青島はため息をついた。 「おいで。」 青島の様子に、未来は訝しげにしながらも差し出された手を取ると、促されるままベッドの真ん中に座り、二人は向き合う形になった。 「そういう姿を他の男に見せるなんて、今後は無しだ。」 予想もしてなかった言葉に、未来はポカンとして青島の顔を見た。 「あの日、雨に濡れて風呂に行っただろう。彼は紳士的な態度で接したんだろうが、俺の中でずっとスッキリしてない。」 「あんなみっともない姿を見せたことに、怒っているんですか?」 眉を八の字にして情けない表情の未来に、青島は首を横に振って見せた。 「雨に濡れて顔を見れば泣いてて、その上、風呂に入って無防備な姿見せられて、改めて口にしてみて本当に彼を尊敬するよ。よくもまあ冷静でいられたもんだ。」 話を聞くうちに、いろいろ思い出した未来としては返す言葉もない。 「確かに、王くんには申し訳ないことしたと思います。」 単純に迷惑を掛けたと思っている未来に対して、青島は違うっと語気を強めた。 「未来、俺が嫉妬して拗ねてるんだ。全く、頼むからここまで言わせないでくれ。」 はっとした未来に、青島は自嘲気味に笑って腕を伸ばすと、未来を抱きしめた。 「つき合ってみて初めて知るお前を、他の男に見られてたまるかって思うのは完全に俺のエゴだけど、それでもこればかりはどうしようもない。」 シャワーを浴びたばかりの匂いに誘われるように、青島は未来の体を押し倒した。 「今だけでも言わせてくれ。俺のものだって、俺だけのものだって。」 未来は青島の頬に、そっと指先を当てた。 「宏さんがそう思ってくれている限り、私は宏さんのものです。元はと言えば宏さんが原因でああなったんですから。」 そうしてどちらからともなく笑うと、言葉では足りないその思いを伝えるかのように、ゆっくりと触れ合った。
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