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次の日。その次の日も、彼女を見かけた。
だが、声を掛ける前に1分が過ぎてしまうということが続いた。
そんなある日のことだ。
「……今日は見かけることもできないのかよ」
17時60分になった瞬間に、僕は全力疾走し、彼女を探した。
でも、誰の姿も見つからない。
「今君は、一体どこにいるんだ」
あと20秒を切った。
「また明日か」
いや、それは違う。
思えば、彼女を見つけることができたこの数日は、奇跡の連続だったのかもしれない。
僕は17時60分になる度に、別の場所へと移動する。
それはきっと彼女も同じだ。
この空間の中で、僕は今まで誰にも会わなかったのだ。
瞬間移動した先に、彼女が毎度現れるなんて、そんな確率は酷く低いはず。
「もう会えないってことも、有り得るな……」
10秒を切った。
その時、
「明日は気分がいいから、○○駅の公園に行こっかな」
僕の背後で、女の子の呟きが聞こえた。
まるで、誰かに構ってもらうことを目的としているかのような、大きめな呟きが。
勢いよく振り返れば、数メートル先に、あの女の子が見えた。
後ろ手を組み、いたずらに微笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
薄ピンクの、無地のパジャマを着ていた。
「君!」
18時になっていた。
僕の大声は満員の電車内に威勢よく響いてしまった。
自宅の最寄りではなかったが、変人を見る視線に耐えられずに次の停車駅で降りた。
○○駅……かなり遠いけど、明日朝から行ってみよう。
僕は有休を取った。
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