1人が本棚に入れています
本棚に追加
静まり返った公園。
月明かりに照らされた花壇の花たちが、肌寒い風に揺られている。
僕は公園の土でできた道に突っ立ち、一日中座り続けたあのベンチを、ぼうっと見つめた。
なんで、こんなにもあの子のことを考えずには居られないんだろう。
これが一目惚れ?
でも、なんか、もっと違うような気がする。
ため息が何度も出る。
風が冷たくて、少し体が震える。
「一体……君はこの広い世界のどこにいるんだ」
なんでこんなに、会いたいんだ……。
暗い空を見上げて下唇を噛んだ。
瞳が潤んできたその時。
「ねえ、お兄さん。ちょっと道開けてよ」
突然、後ろから声をかけられた。
振り返ったが、すぐにその正体を目に映すことはできなかった。
だが、視線を下に移せば、その声の主が見つかった。
車椅子に乗った、酷く痩せ細った体の女の子。
余りの出来事に、息を飲んで固まってしまった。
その子はまさに、あの1分間の中で出会った彼女だった。
最初のコメントを投稿しよう!