わたし、きれい?

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わたし、きれい?

「わたし、きれい?」  夜遅く、塾帰りの男子中学生に声をかけたのはOL風の女だ。マスクをしていて顔の全容は分からないが、目元だけならかなりの美人だ。  性欲盛んな男子中学生。いや、枯れた老人であろうと返答は全会一致。 「すっげぇ美人……です!」  未成年に対する声掛け事案、普通ならもしもしポリスメン? しかし股間の準備が整った男子中学生ならもっこりペニスメンである。 「これでも……?」  美人さんがマスクを外した。  そこには整形手術に失敗したのか、耳まで裂けた口。例えずともオオサンショウウオ並の口である。 「うわエッロ……」  予想だにしなかった発言にドン引きの美人さん。  この年頃の男子中学生など、考えるのはえっちなことばかり。  感染症の流行で、マスクを外すことを認められるのは食事中か、あるいは口を使う時。  そして何よりも、人前でマスクを外すということは人前でパンツを脱ぐのと同義である。  すなわちこの少年からすれば、目の前の美人さんが自らパンツを脱ぎ、その下にある開口部で何かをしようとしているのと同義である。  これがエロいと言わずして何というのか。  人気のない、夜遅く。そこで出会った痴女。  少年は迷うことなくジッパーを下ろして、天を突くモノを取り出した。それはそれは立派な亀だった。 「ひっ、痴漢! えーとえーと何番だっけ!?」  口裂け女はパニックを起こした。  逃げ出しながら携帯電話を操作し、履歴にある番号の一番上に掛けた。  電話はすぐに繋がった。 「わたし、メアリーさん。今、あなたの後ろにいるの」  恐る恐る振り向くと、電話に出ている少年がいる。  口裂け女が最後に見たのは、にやりと笑った少年の顔だった。  
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