さようなら、同い年のあなた

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「あの、俺のこと、覚えてますか?」 目が覚めると見知らぬ天井が見えた。 真白い天井にびっくりしながら周りを見渡すと、近くの椅子に座っていた男性が、「起きました? おはようございます」と穏やかに笑い、そう言ったのだった。 「いえ、ごめんなさい」 こんなひと、知り合いにいたっけ。全然覚えがないけれど、なんだか知っている気もする。 不審な目に気づいたのか、親戚です、と男は短く名乗った。 そうなんだ。覚えがないけど、あんまり会わない遠縁のひとかな。病室っぽいから、変なひとは通されないでしょ。 「わたし、ここに来た覚えがなくて。自分の部屋にいたと思うんですけど」 「うーん。なんか、運ばれたって聞きましたよ」 あれ、と思った。 このひともうーんって言うんだ。ううん、ではなく、うーん。明らかな伸ばし棒。 恋人のくせだった。よくある言い方だから、たまたまかな。 「えっ運ばれた? お酒飲みすぎたのかなあ」 「かもですねえ。すみません、あんまり知らないのにお見舞いになんて来て」 「あ、やっぱり病院なんですね」 そうですよ、と頷いた男が教えてくれた名前はこの辺りでは一番大きい総合病院で、そんな一大事を覚えていないのかあ、と残念な記憶力に悲しくなった。 「今お時間大丈夫なんですか? お仕事とか」 「今日は休みです」 「じゃあおしゃべり付き合ってくれたり……」 「いいですよ」 やったあ。何もわからないときは、まずお話して情報収集をするに限る。
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