さようなら、同い年のあなた

8/10

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
親戚だなんて、どう考えても無理がある。 彼は自分の外見が年老いたことを気にしていた。 ばかね、わたしも同じでしょと言うと、鏡を渡された。痩せこけてはいるものの、おおよそあの日のままらしかった。 「じゃあ今日から見た目は五歳差? 同い年も歳の差も味わえるなんて、随分お得」 「えっ、五歳差でいてくれるの」 「えっ、いちゃだめなの?」 「だめじゃないだめじゃない!」 それはよかった。なんだって、五歳差になったくらいで好きなひとを諦めなくちゃいけないんだ。 「五年もあればいろいろ美味しいお店見つけたでしょう。今度連れて行ってね」 「うん」 「おすすめの曲もお話も増えたでしょ。今度貸して」 うん、と彼は泣き笑いをした。 ばか。泣きたいのはこっちの方。そんな、こんな、……なんで待ってたの。わたしが起きなかったらどうするつもりだったの。 そんなの、と彼は言った。 「僕はきみがいいんだ。……きみが、まだ、僕でもいいのなら」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加