6人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
空を見上げると、太陽が傾き始めている。
じゃあ、とっくに学校は終わったんだ。
あたし、どれだけ寝ていたの?
辺りを見渡せば、ランドセルを背負った小学生や、制服姿の中学生や高校生の姿が見える。
コンビニに入ろうとした時。
『紘、待ってよー。』
可愛い声が聞こえてきた。
え?
待って、紘なんて名前は一人だけじゃない。
他にもいるはず。
だけど、不安が拭えなかったあたしは振り向いてしまった。
そこにいたのは、スーパーで見かけた女性(ひと)。
大人かと思ったら制服をつけていて、嬉しそうに紘の腕に絡みついていた。
紘の手には昨日見た花束で。
思わず、あたしは二人の後を追いかけた。
二人の後を追いかけるように歩くあたしは端から見たら勘違いをされそうだ。
時折、すれ違う人々が二人を見て顔を赤く染めている。
“羨ましいー、美男美女でお似合いだよね。悔しいけれど”
やっぱり、他の人からみれば恋人同士に見えるんだ。
ズキッと胸が痛んで苦しい。
ねぇ、紘。
どうして、絡みついている腕を振り払わないの。
それは、彼女だからだよね。
半年は付き合っているのに、紘の気持ちが全然わからない。
近くにいるはずなのに、心が遠いんだ。
どうやったら近づける事が出来るの?
あたしとあなたの距離。
あたしから見る二人は、本当にお似合いだ。
二人の間には、入り込めない雰囲気が出来ていて、どれだけ親密しているのかさえ、わかってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!