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あなたの瞳に映る人は誰?【紘side】
まさか、結愛がいたなんて気づかなかった。
何やら視線を感じて顔をあげると、今にも泣き出しそうな顔で、結愛が俺を見ていた。
嘘だろ。
“ごめんなさい。二人の邪魔をして”
くるりと身体の向きを変えて走り出す、結愛を見て思わず抱き締められている腕を振り払らい立ち上がった。
“紘、あの娘が新しい彼女なの?”
“悪い、千夜”
呆然としている千夜は俺を真っ直ぐに見る。
“行かないで、紘”
“俺が好きなのは、千夜じゃない。結愛だ。ごめんもう一緒にいられない。たとえ幼なじみだとしても。これ以上、傷つけたくないんだ”
後ろから呼ぶ声が聞こえたものの、振り返らずに結愛の後を追いかけた。
結愛、彼女は違うんだ!!
あの女の子は亡くなった千花の双子である姉。
千花の代わりでもいいからと。
あの事故の後からずっと俺の周りにいた女の子。
腕に絡みついてくるのは、双子だから似ているでしょ?
嫌がる俺を無視して、会うたびに絡みついてくる。
そのうち、あたしを好きになる。
何を言ってるんだか、と心の中は冷めていた。
結愛を自宅まで送っていると、また会ってしまった。
“ねぇ、紘。明後日は千花の命日よね”
あれから、欠かさずに通っていた元彼女の轢かれた現場へ花束を飾る事。
だけど、今度からは。
千花、ごめんな。
俺、大切な人を見つけてしまったんだ。
その人を会わせるよ。
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