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崩れるように、ぺたりと座りこみ、いたる所から血が流れている結愛の身体を抱き締めた。
洋服と腕や掌が血で赤くなっていくのも構わずに。
「お願いだから、目を開けてくれ。結愛。」
いくら、名前を呼んでも反応がない。
たくさんの人で埋め尽くされている中、千夜の顔が青ざめて呆然としていた。
やっと、千花を忘れて。
これから結愛と楽しく過ごそうと思ったんだ。
バイトで買えた指輪は、結愛の誕生日の時にプレゼントをしようと思って秘密にしていた。
あの日、初めて結愛を見た俺は一目惚れをしたんだよ。
真っ赤な顔をして、震える身体を抑えながら告白をしてきた時、俺は二度と離さないと誓ったんだ。
でも、俺は過去に囚われすぎて、大切なものを見ようとしなかった。
結愛は一生懸命に頑張っていたんだ。
不器用だけど一途に俺を見てくれる。
そこが大好きだったんだよ。
お願いだから、目を開けてくれ。
あの笑顔で微笑んで俺の名前を呼んでくれよ。
遠くから救急車とパトカーのサイレンが、聞こえてきた。
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