カキフライ

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きっと今も幸せに暮らしているだろう。卒業してから二回くらい、『キッチンナナエ』には行ったことがあった。初々しく料理を提供してくれた彼の姿が、まだ忘れられない。二人ともコックコ一トが似合っていた。  家でゆっくり過ごした二日後。初めて外へ出た。夜の営業時間に合わせて、相鉄本線に乗るため、退職届けが入ったバッグを肩に掛けて駅へ向かった。家々の壁が、夕陽で明るい色に照り返している。夜に包まれる前のオレンジ色の光を浴びた。陽が長くなったことを改めて実感する。夕方になると流石に寒かった。  帰宅ラッシュの時間帯の、すれ違う人々の服装は春らしいパステルカラ一になっていた。ピンクや淡いブル一のスプリングコ一トが目立った。 (そういえば洋服を最近買っていないな)
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