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♯6 優しく抱きしめ
記憶喪失など、どこかのドラマか漫画の出来事だと思っていた。
担当医師の説明では、一日経つと記憶がリセットすると言う。
ようやく退院の許可がおりたものの帰宅したマリアは、どこか緊張した面持ちだ。
「マリア!! ここは自分の家なんだから、よそよそしくするなよ!!」
優しく背中を押して促した。
「ふぅン、ここが私の家なのォ……」
キョロキョロと室内を見回した。まだ緊張感が拭えない。
「ああ、そうだよ。さァ、こっちが寝室だ」
ドアを開け、中を案内した。
彼女が入院している間、少しだけ掃除をしておいた。
「えェ……、寝室?!」
珍しそうにベッドを見ている。
「フフ、おいで、先生からも激しいスポーツは控えてッて言われたけど……。
適度な《運動》は、むしろ良いッて、さァ!!」
ボクは背後から優しくマリアを抱きしめ、遠慮なくお姫様だっこをした。
「キャァ……ッ」
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