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元々縁側から外に出て行くことはあったものの、いつも夜には帰ってきていたから何日も帰ってこないのは初めてだった。
事故にでも巻き込まれたのではないか。どこかで飢えているのではないか。
最悪の事態が頭を掠めたものの、おじいちゃんは一言、
「ばあさんを探しに行ったんだなあ」
と寂しそうに呟いただけで。
近所を探したり、ミケの好物だった煮干しをたくさん用意して縁側に置いてみたりもしたけれど、ミケは全く帰ってこなかった。
大切なおばあちゃんを失い、ミケもいなくなってしまったおじいちゃんが心配で、私はこの一週間をこの家で過ごしている。
幸い通っている高校は今は夏休みだ。
宿題はすぐ終わってしまったため、ミケ探しに集中できると思っていた矢先。
おじいちゃんに「ミケはすぐ帰ってくるから」と言われてしまい、こうやって縁側でミケの帰りを待っている。
今、どこで何をしているのだろう。
おばあちゃんは、もうどこにもいないのに。
おじいちゃんはすぐ帰ってくると言うけれど、本当に帰ってくるのだろうか。
車通りも少ない田舎だけれど、何があるかはわからない。
無事でいてほしい。それを願うばかりだ。
「さぁ、畑仕事の続きでもしてくるよ」
「……おじいちゃん」
「ん?どうした?」
「……ミケ、いつ帰ってくるかなあ」
「どうだろうなあ」
「おじいちゃんも、ミケに早く帰ってきてほしいでしょ?」
空を見上げながら呟いた声に、おじいちゃんは「そうさなぁ……」と言葉を止めて。
「そりゃあばあさんの忘れ形見みたいなものだからなあ。早く帰ってきてほしいよなあ」
静かに微笑んだ表情に、胸が締め付けられる。
本当は、おじいちゃんが今一番ミケを抱きしめたいはずなのに。
おばあちゃんが大切に育ててきたミケは、おじいちゃんにとっては正しく忘れ形見のようなもの。
ミケがいなくなって、一番寂しいのはおじいちゃんのはずなのに。
「ばあさんの代わりにはなれないけど、一緒にお参りくらいはしたいな」
気丈に振る舞うその声に、私はそっと微笑んで頷くことしかできなかった。
おじいちゃんのためにも。
「……ミケ、おじいちゃんが待ってるよ。早く帰っておいで」
そう願わずには、いられない。
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