招待状

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「最近、民間で宇宙旅行に出ようというニュースが多くなってきたね」 ガウンを羽織った姿の男は朝のティーを飲みながらモニターに映し出される記事を読んでいた。 「はい、旦那様。以前にお会いした富豪の方々がそれぞれの手で宇宙に飛び出そうと奮闘なさっている様でございますね」 「ふむ……。だが、まだ地球の周りを回って帰ってくるのがやっとという所なのかな」 「そのようで」 「それが終わったら、次は月へ行って……というところか」 「順番的には、そのようになるかと」 「人が火星辺りまで楽に到達できるようになるのは、まだ大分かかりそうだ」 「はい」執事は、少し声に落胆を匂わせた。 「仕方が無いのかもしれないな。富豪と呼ばれる人間は、どんなことにも自分のやり方があって、それが正しいと信じて自分の財産を築いたのだからなぁ。今さら、『みんなでお金と知恵を出し合えば』なんて、受け入れられるはずも無い」 男は、もう一口、ティーを飲んで、モニターに映し出される記事を読み続けた。 そばでは、執事が細々とした片付けものをしながら主人の言葉を聞いては返事をしていた。 「ということでございますので、旦那様が先日、訪れて、是非にと声をおかけになったパーティーですが、招待状をお送りいたしました富豪の方々は、まだこちらに来るのは難しいように思われますが……」 「ううん、ちょっと、地球人を招待するのは早すぎたか。私のミスだな。やはりまだまだ、こちらから地球を訪問するしかなさそうだな」 「はい、そのようで」 異星の富豪は、まだ地球を温かく見守っている。
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