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Side 祭里
目が覚めたら、誰かに抱きしめられていた。
ミントのような爽やかなこの匂いは、黒川だ。
しばらく黒川の匂いを堪能する。
こんなにαのフェロモンを感じるのは黒川だけだ。
カーテンが引かれていて薄暗いが、朝が来たようだ。10月15日のループを抜け出せたみたいだ。
「おはよう。二日酔いは大丈夫か?」
イケメンは声までイケメンだ。
黒川がカーテンを開けてくれた。ここは黒川の部屋のようだ。俺の部屋よりかなり広い。
昨日は黒川と居酒屋で飲んでいて、黒川が優しくお酒を勧めてくれるから、気持ちよくたくさん飲んでしまった。
途中から、全く覚えていない。
「ごめん。俺、迷惑をかけなかったか?」
「途中から寝てただけだ。16日を無事迎えたかったから、伊坂と離れたくなかったんだ」
「16日を無事って?黒川も繰り返していたのか?」
黒川から見たループの話と、不思議な声の話を聞いた。
俺が何度も死んでいたというのは驚きだ。
「黒川はいたずらな神の使いを何度も救ったんだな」
ただ俺を死なせたくないだけなら、黒川は会社で俺に話しかけて、帰宅時間を遅らせてもよかったんだ。
「きっと伊坂なら何度でも神の使いを助けると言うだろうと思ったんだ。伊坂が番として誇れる自分でいたかった。
伊坂が好きだ。番になってほしい」
番…いきなり黒川が重い。
「番って…まずは付き合うところからじゃないのか?」
「俺たちは『運命の番』だ。それに俺は何度も伊坂が死ぬのを味わったんだ。もう離れて暮らすことはできない」
黒川が両手で俺の手を包み込む。
あの都市伝説の「運命の番」か…
フェロモンが薬で抑えられるから、今どき信じる人は少ない。
「俺は伊坂の匂いがわかる。伊坂は俺の匂いが分かるだろ。薬で抑えられないなんて『運命の番』以外ない。
体の相性はバッチリだ。今から確かめてもいい」
黒川の勢いが怖い。
最初から体の相性の心配か?
それが嫌ではないから、きっと近い内に絆されるんだろう。
「今どこにいますか?」
そうお互いに気にする関係に俺たちはなっていくんだろう。
了
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読んでいただきまして、ありがとうございました。
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