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「今どこにいるの?」
「今部活の帰りだよ」
少し疲れ気味にハジメはケータイの電話で答えた。
「おつかれ。じゃあご飯温めておくね。一緒に食べたいから。気をつけてね。」
「うん」
と電話を切るとマサキがニヤニヤしながらどついてきた。
「ハジメさんもすみに置けないですな〜」
「なんだよ急に」
「電話の相手は女性とみた」
「姉ちゃんだよ」
「そら知ってるっつーの!あの美人姉ちゃんだろ!あーあ良いなあ俺もあんな美人姉ちゃん欲しいなあ」
ハジメの3つ上の姉は雑誌やテレビに引っ張りだこでモデルをしている。
知らぬ人はいないくらい有名人だ。
よく学校の同級生や先輩、後輩から羨望の眼差しをかけられる。
だからこうして電話をかけてくると大抵
「代わってくれ!」
とか
「声が聞きたい!」
とかなにかにつけてコンタクトをとろうとする人が多い。
ハジメ自身は自分の立場を羨ましいとは思ったことはない。たしかに姉は美人だ。その上家事もお手の物だ。普段忙しいのに弟のハジメのことをいつも気にかけてくれる。
ハジメにとっては唯一の家族であるから姉がいてくれて本当に有難いと思っているしやましい気持ちなど微塵も隙間に入る余地も無いほど大切にしたいと思っている。
「なあなあハジメさん、俺をアヤメさんに紹介してくれませんか?」
「紹介って…普通に会いたいだけだろ?姉ちゃんは忙しいから悪いけどそんな暇は作れないんだよ」
悪いな
と言って毎回断っている。
ハジメも姉を思ってのことだから、本当は友達の願いを叶えてやりたい気持ちもあるのだが、迷惑はかけられない。
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