3340人が本棚に入れています
本棚に追加
案外、口数が少ない彼は黙ったまま焼いて、時々私の皿に乗せ、自分も食べては大盛りの肉を口いっぱいに含むのを見て、頬が膨れてるからハムスターみたいに見える
「 りょーちゃんって、鬼とか言われるのにハムスターみたいだね 」
「 ぐふっ!っ…! 」
吹き掛けた彼は我慢して、米が飛ぶのを防いだけど、水を飲み一気に喉へと流し込んだ
「 急にハムスターってなんだ 」
「 いや、家にさ。ウタって言う…ブラックドミナントスポットって毛色の…黒白のハムスター飼ってるけど、その子も頬にパンパンに入れてるなーって 」
「 嗚呼、小動物は食べ物を持ち帰らないと天敵に見付かりやすいからな 」
「 そう、だからちょっとりょーちゃん可愛かったよ。頬にパンパンにいれるから 」
「 ……別に、彼女の前で気取る必要も無いだろう 」
彼女の前で、と言われると嬉しいと思った
部下の前では絶対にそんな風に食べないからこそ、ちょっと笑みが漏れ、焼けたお肉を彼の皿に乗せる
「 じゃ、いっぱいあげる。食べて 」
「 嗚呼…。御前が注文したなら食え 」
「 特上カルビ、追加しよ 」
「 おい…。まぁいいが… 」
やっぱり柔らかいお肉っていいよね!
タンばかりより、カルビの方が柔らかくて美味しいから追加すれば、火が上がり過ぎないようにホルモン系統を少しずつ焼きながら、食べていく
「 そう言えばさ 」
「 嗚呼 」
「 今日?昨日か…、私の失敗で赤字になった金融企業に謝りに行ってくれてありがとね 」
話を切り出しやすい雰囲気だった為に、それとなく伝えて、焼けていくお肉を眺めていれば、彼は口に入れようとした手を止め、答えた
「 御前だけの失敗じゃない。俺の判断ミスでもある。だから、謝りに行くのは当然だろ 」
「 んー、でもさ…頭下げたって。りょーちゃんが頭下げるぐらいなら、私は土下座でもするけどね 」
「 何か…聞き間違いしてないか? 」
「 ん? 」
どういう事?と視線を上げれば、彼は密かに眉を寄せる
「 頭下げたのは、向こうだからな?成果を出せずすみませんって、俺は寧ろ構わないと言った方だ。判断ミス以前に、向こうの実行する気の無い、対応の問題だ 」
「 へ?だって、于海さんが社長が九十度の角度ぐらいで謝ってたって。男らしくて格好いいって 」
あの二年先輩である、于海さんが言ってたと言えば、尚更彼の眉間のシワは濃くなり、呆れるように視線を外す
「 俺が頭下げるかよ。話を盛られたな。その場のノリで 」
「 そう、なんだ…。でも、りょーちゃんが男らしくて格好いいのは皆知ってるよ。私もそう思うし 」
「 そういう立場だからな 」
そうならざる得ない立場…、そう言ったような彼の言葉に、如何返せばいいか分からなかったから、少し焦げた肉を皿へと乗せる
「 じゃ、もっといっぱい食べて、男らしくなってね! 」
「 御前……会社より、今の方が百倍ぐらい可愛いぞ 」
「 え、なんで?? 」
そんな可愛さ違う?と疑問に思う
寧ろ、会社にいる時のほうが髪を結い上げてたり、メイクだって軽くしてる
ノーメイクの今よりマシだと思うけど?と思えば、彼はちらっとこちらを見た後に少し焦げた肉を口へと含む
「 仔猫に威嚇されても何も思わねぇが、仔猫が懐いたなら可愛いだろ。そういう事だ 」
「 えぇ…虎って言われるのに。又はマングース…? 」
「 はっ、ありえねぇ 」
鼻で笑われた事にムスッとすれば、軽くそっぽ向いてから口へとサラダを入れムシャムシャと食べていく
二年ぐらい睨んでたのにマングースにすら思われずに、仔猫と思ってたなんて…
私をどう下に見てたんだ
「 …まぁ、そう突っ掛かって来る御前は、可愛いけどな。中々俺に対して意見を言う奴は少ないからな 」
「 へぇー、それでちょっとは好意あったとか? 」
にやりと笑って、問えば彼は真顔で告げる
「 部下としか見てなかったから、全く無かった 」
「 ……ですよねー。え、無かった…ってことは? 」
過去形の様な言い方に、ちょっと期待を持って目線を上げれば、彼は僅かに視線を外し口元へと箸を持った手で隠す
「 …興味無い奴を…何度も抱くかよ 」
「 そこば 好きになってきた ゙って格好良く言うところだよ。まぁ、私は社長(のお尻)が…二年ぐらい前から好きだけどね。こうして付き合えて、一緒にいる事が幸せです( お尻を好きな時に眺めて、触れるので! )」
最高のお尻をいつでも堪能出来るって事は、素直に嬉しいと、ほんのりと頬を染めて言えば彼は外していた視線を此方へと向ける
「 ……そんなに俺が好きなら、同棲するか? 」
「 ……へ? 」
「 後で荷物とハムスター纏めとけ。そのまま家に連れて帰る 」
「 えぇ…… 」
「 どうせ、社員用のマンションだろ?何処に居ようが同じだ 」
いや、凄く違うと思うけど!!
ハムスター纏めとけってなに!?
ウタくんは荷物じゃないよ!
いや、それ以外のものが荷物かもしれないけど!!
この人は、やっぱり決断力も早い
「 やっと食べ切ったな……」
「 和風抹茶パフェ、白玉団子の抹茶アイスお願いしてるので、ちょっと待ってくださいね 」
「 …昼、足りなかったろ 」
「 …へへっ 」
カルボナーラ一人前だけは、流石にお腹空くよね
まぁ、意外に食べる方だから飲みながらハシゴとかしてるんだけどね
お陰で食費が凄いけど……
最初のコメントを投稿しよう!