あなたと海をゆく

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 授業がすべて終わった後、地下鉄とバスを乗り継いで向かうのは、大きくて白くて綺麗な建物。街の中心部にあるにもかかわらず、そこだけ、静寂が漂っているような場所だ。  すっかり顔見知りになった警備員に会釈して、入館ゲートでカード認証・顔認証・声紋認証をパスし、ようやく職員が立ち働く内部に入って行く。けれど、私が立ち入りを許可されているのは、たったひとつの部屋とトイレ、食堂くらいだ。長い廊下を歩いて複雑な階段を降り、ひと気の少ないフロアの奥、大きな扉の前に立つ。白くて重い扉のロックは、入館ゲートより更に複雑な認証をパスしてようやく、カチャリと開く。 『こんばんは。今日も来てくれて嬉しい』  そんな文字が、部屋の隅に置いてあるモニター画面に映し出される。 「こんばんは。私も、会えて嬉しいよ」 「オーシャン」の中に生きるAIは、私の言葉を聞いて、嬉しそうな顔文字を画面に表示させた。
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