Strelitziaを抱きしめて

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 そんな風に思うことが、間違っているのかもしれない。本当に自分の声で誰かを救いたいのなら、上手くなるべきなのかもしれない。  ゴーン、と駅前の鐘が鳴った。ハッとして時計を見上げれば、午後8時を指していた。どのくらい考え込んでいたのかはわからなかったけれど、手袋もしていない望未の両手は、駅前の明かりだけでも見えるほどに赤くかじかんでいた。  望未は、悔しかった。それと同時に、打ちのめされてもいた。  自分なんかの声では、誰も救えない。  頭のどこかでずっとチラついていた言葉が、はっきりと形を持って望未に襲い掛かった。  こんな風に自分を否定しなきゃならないのなら、もう、やめてしまおうか。  ふと過ったその考えが、一番の正解のように思えた。  次の曲で、もう、終わりにしよう。空から降ってくる雪がその質量を増していく中、ぎゅっと唇を噛んで、望未は自分の全てをかけて歌った。
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