Strelitziaを抱きしめて

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「受け入れるって……何を?」 「俺たちのつくっているものは、無駄だってことを」  望未と歩夢は、ふたりで『Strelitzia』という名前で活動している。歩夢の曲を望未が歌って、それを動画サイトに投稿してきた。もちろんプロではないので、動画の作成や宣伝などもすべて自分たちで行っている。  もうすぐ、初めての曲を投稿してから3年が経つ。その間、動画サイトで曲を投稿し続けてきた。新曲を投稿するたびに、肯定的なコメントやいいねがつくし、少なからず、“Strelitzia”のファンだと言ってくれる人もいる。ランキングにも、上位とは言わないまでも食い込むくらいには成長した。  だけれども、否、だからこそ――歩夢も望未も、その上を夢見てしまった。  コンテスト入賞。  その夢は、2年以上経過した今も、未だ、夢のままだ。 「無駄って、何でそんなこと」  小さく吐息を零した望未が戦慄く声でそう言った。いつも眠たそうにしている色素の薄い双眸は、まあるく見開かれていた。 「だってそうじゃないか。何度も何度もコンテストに出したりしてきたけど、一度も入賞したことないだろ」  ふたりで毎回懸命につくりあげる作品は、入賞はおろか、一次選考だって通ったことが無い。それを繰り返されたら、誰だって心が折れる。
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