Strelitziaを抱きしめて

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「でも、わたしたちの作品を好きだって言ってくれる人だって、いる、」 「世間に認められたいんだよ!」  声の輪郭から、ぼろぼろと、歩夢の感情が落ちていく。その強さに押されたように、望未はきゅっと口を噤んだ。  初めは、たったひとつの“いいね”だけで飛び上がるほど喜んでいた。自分たちが投稿した作品にコメントがついた日なんて、ふたり一緒にコンビニでケーキを買ってお祝いした。  誰かが、“Strelitzia”を認めてくれている。  歩夢も望未も、その事実だけで充分だと思っていた。自分たちは十分に認められていて、そうして、満たされていると。  けれども、人間と言うのはひどく強欲な生き物だということを、あの頃の彼らは知らなかったのだ。  ひとつ満たされたら、次を求める。そういう風にプログラムされている種族だからこそ、人間と言うのはここまで繁栄したのかもしれない。  けれども、それは彼らにとっては、辛いプログラムだった。  コンテストに作品を出し始めて、漸く自分たちが井の中の蛙だということに気がついた。
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