Strelitziaを抱きしめて

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 1曲目、2曲目、3曲目……コンテストに出すことによって“Strelitzia”自体の注目度が上がり、肯定的なコメントが増えるとともに、否定的な評価も見られるようになった。それは、彼らのエネルギーを着実に減らしていった。  それでも、歩夢も望未もめげずに活動を続けた。コンテストに落選するたびに「自分たちはまだいける」「きっと縁がなかったんだよ」と空元気を振りかざして。  コンテストの結果発表日の前夜には、必ず歩夢の部屋で前夜祭を行った。落ちてもまた頑張ろう、とそう言い合って、エナジードリンクの缶で乾杯をした。  無駄に甘ったるい味で、ふたりは、ずっと誤魔化していた。  空元気を振りかざす為のエネルギーなんて、もうとっくになかったというのに。  エネルギーがないのに、走り続ける事なんて出来ない。  曲をつくっている歩夢は、もう限界だった。曲に対する世間の評価が、自分自身に直結しているからだった。そうして、遂に歩夢は崩れてしまった。
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