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それが今はどうだろうか。誰かのためなんだろうか、それとも自分のためなんだろうか。
それすらも、彼にはもうわからないのだ。
何も言えずに黙り込んだ歩夢に、壊れたロボットのように繰り返し望未は同じことを問う。
「ねぇ、歩夢。なぜ、曲をつくるの」
なんで、そんなことを訊くんだよ? 望未だって、同じ立場だというのに。認められなくて、苦しくないのか。辛くはないのか。
「聞いてる?」
声色は柔らかいけれど、そのまなざしは鋭い。まるで問い詰められているように感じた歩夢は、その窮屈さに、つい声を荒げた。
「じゃあ望未は何のためだって言うの!?」
苦しくて、辛くて。そんな風になってまで、何のために、この活動を続けるの。
「苦しくて、辛くて、それでも歌う理由があるっていうなら、俺に教えてよ!」
夜の冷たい空気を突き破るように響く歩夢の声。それはとても、痛くて、――痛い。
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