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苦しくないのか、辛くはないのか。
何を言っているんだ。
俺たちは同じだ。しんどいにきまってるじゃないか。
けれども、歩夢が見ていた彼女はいつだって笑顔だった。それは彼女の努力の上に成り立っている笑顔だったと、漸く気がついた。
「どうしてそんなに頑張れるの」
小さく零れた己の言葉が情けないほどに弱々しく思えて、歩夢はさらに肩身が狭くなった。自分だけが逃げ出しているような、そんな気分になった。だから歩夢は、奥歯をぎゅうっと噛み締めた。
望未は、瞳を泳がせて首を捻った。迷うように泳いでいた望未の視線が歩夢へ向かう。
「どうして頑張れるか? そんなの、決まってるじゃん」
彼女は、その眼で、まっすぐに歩夢を見据えた。
「しんどいとき、歩夢がつくった曲が、わたしを掬い上げてくれるからだよ」
望未は泣き出しそうな顔で、だけれども嬉しそうに、小さく笑った。
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