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願わくば、この空の続く場所で
今どこにいますか?
そうメッセージを送ったけれど、返信は今のところない。メッセージの主が僕だとわかって未読スルーしているのか、それとも単に気付いていないのか。そんなことすら、僕にはわからない。
そう、僕は君のことなんて何もわかっていなかったのだろう。君がどんな思いで日々を過ごしていたのか、僕は君にどうすべきだったのか、ふたりの間の正確な距離すらも、僕には見えていなかったのだ。
* * * * * * *
桜並木が徐々に緑へ変わっていく、4月はじめ頃。僕は新しいクラスで早速孤立していた。理由は単純、クラスの中心にいる同級生たちの趣味を理解することができなかったからだ。彼らの笑いに合わせられず、同じ感覚を共有できなかったこと――理由と呼ぶには単純で、それだけに決定的に過ぎた。
ノリが合わない、つまらない。
そんな簡単な言葉で僕は、なんとなく居場所のない学校生活を余儀なくされることになったのだ。
別に大勢と仲良くしようとなんて思っていたわけじゃない。友達百人なんて夢にも思っていなかったし、友達や知り合いの数が人間力だとも思っていない。それでも、あからさまに空気として扱われるというのは、なんとなく胸が苦しかった。
いっそのこと本当に空気同然の存在になれたら――そう思っていたとき、僕は彼女に気付いた。
いつも教室の隅に置かれた机でスマホをいじり、何事も意に介さない――僕が押し潰されそうに感じていた“孤独”を平然と受け入れている、中山史織に。
その姿に、僕はひどく引き付けられたのだ。
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