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 後ろからくねくねしながら追いかけてくる25歳、社会人3年目になる男。俺は「キモイ、やめろ」と言うと、逃げるようにエレベーターへと向かった。エレベーターのボタンを押すと、ゆっくりと扉が開く。中には宿泊客であろう人がいて、俺たちは全員が出てから中に入ると、会場がある階のボタンを押した。 「今、佐藤の真似してみたんだけど。似てない?」 「はそんな呼び方しないし、くねくねもしない」  ハッとなると、海音がまたニヤニヤして「ち・な・つ?」と顔を覗き込んできた。人に殺意を覚えたのは初めてだと思う。今すぐに、この野郎をボコボコにしてやりたいという感情が心の中で膨れ上がった。 「お前、まじで覚えてろよ」 「何で俺がキレられなきゃいけないんだよ」  不服そうに唇を尖らせた海音は、「濡れ衣反対」と言う。 「まじで、次やったら……分かってるよな?」  ドスの聞いた声で言うと、海音に一睨み利かせる。 「分かった、分かったから。その殺意を伴った瞳を今すぐに閉じなさい」  怯んだように後退り、海音は苦笑いを浮かべる。俺は溜息を吐くと、ナイスタイミングでエレベーターが止まり、扉が開いた。外に出ると、ホテルの従業員しかおらず、同級生の姿は誰一人として確認できなかった。 「やっぱ、気まずい?」 「いい加減、あいつの話題は止めろよ……」 「だって気になるじゃーん。お前ら、けっこう長かったよな? お似合いってずっと言われてたのに、何で別れたの?」 「別に、お前には関係ない」 「えー、海音くん悲しい。ぴえん」 「若者言葉を使おうとするな」 「25はまだ若者ですー」
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