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 思いっきり図星だ。俺はそれが何だか悔しくて「違うし」と反論すると、海音が「否定しなくていいから」と笑いながら言う。チラッと腕時計を見て、時間を確認した。あと5分で同窓会が始まる。千夏が来る気配は一向に無かった。 「佐藤、来ないなぁ……。俺、電話してみるわ」  海音は隣で千夏に電話をかけようと、スマホを操作する。俺は千夏が一向に来ないことにホッとしている反面、寂しさもあった。もし今日会えたなら、あの日どうして俺は千夏にフラれたのかを聞こうと思っていた。何の理由も無く、突然卒業式の日に「別れよう」と言われたその理由を。  俺はフラれたことに対してのショックが大きくて、しばらくはちゃんと稼働することが出来ずにいたのを今でも覚えてる。それぐらい、俺は千夏のことが当時は好きだったし、別の大学に進んでもこの関係が続けばな、なんて思ってたりもしてた。 「佐藤、電話でないわ」  海音が通話を切ると、「そっか」と俺は素っ気無く言う。7年ぶりの再会は、どうやらできそうにないらしい。 「もう時間だし、そろそろ始めるか」 「ああ」  俺たちは立ち上がると、受付の机に置いてあった荷物を諸々片付け始める。俺は時間も過ぎているし、片付けは俺に任せて先に同窓会を始めろと海音に言うと、海音は礼を言って中に入った。パタンと扉が閉まり、俺は小さく聞こえる海音の司会進行を聞きながら、黙々と荷物の片づけをした。 「あのっ」  片付けも終わる頃、目の前で声がした。俺はに一瞬困惑し、固まってしまう。 「あの、遅れてごめんなさい。電話もくれてたみたいだけど、気づかなくて……」  ああ、この感じ。女子にしては少し低めの声。「冬弥くん」と呼ばれると、くすぐったくなる声。  俺は顔を上げると、バチっと目が合った。向こうは驚いたように目を見開いている。  高校の時より伸びた髪。大人っぽくなった雰囲気。でもそれ以外は変わらない、彼女の姿。   「……冬弥くん?」 「千夏……」  人生で一番好きだった、千夏が目の前にいた。
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