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「……覚えててくれてたんだ」 「あー……まぁ、一応?」 「……曽田くんは、今何してるの?」 「俺は今、少年漫画の編集やってる」 「そうなんだ、漫画好きだったもんね」 「あ、うん」  そしてまた会話が終了する。気まずさのあまりシャンパンが進んだ。しばらく無言になってから、俺はやっと決意すると「あのさ」と口を開いた。「何?」と声が上ずって、千夏がすぐに反応する。 「……何で、俺ってフラれたの?」  瞬間、千夏の顔がピシッと石像になったみたいに固まる。やっぱり地雷だったか。俺はシャンパンを飲もうとすると、グラスは既に空になっていて、俺は机の上に置いた。 「それは、その……私が曽田くんと、と思ったから」 「……え?」 「大学生になったら、色んな人に出会うから。オシャレな人とか、可愛い人とか、そういう人たちにいっぱい出会う訳でしょ? そう思ったら、怖くなっちゃって。曽田くんの隣に堂々と、私なんかじゃ立てないなぁって。だから、別れようって言いました……」  俺は千夏が言った予想外の言葉に、思わず「何だよそれ……」と言ってしまった。ビクっと千夏が体を震わせ、俺を見る。 「俺は、千夏が好きだったし、千夏しか見てなかった。釣り合わないって何だよそれ。だったら俺の方が千夏には釣り合わねぇよ。オシャレ? 可愛い? そんなのどうでもいい。俺は、あの時千夏が好きだった。大学に進学しても、この関係が続けば良いと思ってた。俺が好きなのは、ずっと千夏なんだよっ」  ハッとなったときには、既に遅かった。感情的になったせいで、声のボリュームも大きくなり、周りにいた奴らは皆ニヤニヤしたように俺たちのことを見ていた。 「あ……悪い」 「いや、全然……」  俺はシャンパンを飲もうとすると、空だったのを思い出して「あー」と言う。全身が気恥ずかしさで火照っていた。 「移動するぞ」 「え?」  俺は千夏の手を握ると、二人っきりになれるスペースを探して部屋の外に出た。周りに人がうじゃうじゃといるここじゃこの話はできない。誰にも邪魔されない、二人になれる空間に俺たちは足を運んだ。
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