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「着いた。お前今どこにいんの?」
もう陽は傾き始めているというのに、これからが本番かのように人は賑わう一方だった。東京の駅前は毎日が騒がしい。深夜になっても利用客がかなりいるというのが、地方と違うところだった。
俺、曽田冬弥はスマホを片耳にキョロキョロと辺りを見渡すと、少し先で手を振る友人の朝比奈海音の姿を見つけた。俺は電話を切って、海斗に駆け寄ると「久しぶりー」と明るい声で言われる。「久しぶり」と俺も返すと、会わなかった空白の時間を埋め尽くすように二人肩を並んで歩いた。
今日は高校の同窓会で、久しぶりに同級生たちと会える日だった。同じ大学に進学した奴らは何人かいたけど、学部が違うことで交流はあまり無く、基本的に会うことはほとんど無い。海音は俺とは別の大学に進学したが、それでも唯一高校卒業後も連絡を取り合っていた友人だった。社会人になってからは年に何回か会って食事をする仲で、今日会うのは3か月ぶりとなる。
「皆、どうなってるかな」
海音はまだ明るい空を見上げながら、好奇心をチラつかせて言った。俺は「さぁ」と言うと、海斗が「つまんなそうにするなよー」と笑いながら言う。
「まぁ、昔から冬弥は人間関係に無頓着な奴だったからな」
「悪かったな、無頓着で」
「いや、褒めてるんだよ。人間関係を気にしすぎるよりは、無頓着の方が断然良いだろ。俺はそう思う。無頓着になれない奴なんて、この世には五万といるんだから」
海音は高校の時からずっとクラスの人気者の所謂陽キャで、そんな海音がどうして俺みたいな陰キャと仲が良かったのかは未だに謎だった。陽キャは陽キャ同士で仲良くなるのが、法則のようなものだとてっきり思っていたから当時の俺にはかなりの衝撃が走った覚えがある。
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