にぶんのいち夫婦特別編 樋口編原作

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「ミュー?ミューどこ?」 異変が起こったのはクリスマス間近の12月だった。 普段はツンツンしているくせに、餌だと言うと飛んでくるミューがその日はいくら呼んでも姿を見せなかった。 冬場は窓も開けないし家から出たとは考えられない。 あちこち家の中を探して、ようやくクリスマスツリーの影で見つけたミューはすでに固く冷たくなっていた。 震える手で小さな体を抱き上げ、顔を寄せる。 こぼれ落ちる涙だけが温度を持って彼女を濡らした。 幸せにしてやりたいと思っていた。 今まで辛かった分もたくさん。 でも、結局。 俺に出来たことはあんまりなくて。 この小さな命に支えられていたのは俺の方だった。
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