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「そう冷たくあしらわないでよ。これでも心配しているんだから」
自嘲気味に笑う母の顔が寂しげに歪む。
傷つけている。
そう思うと気まずくて、視線を逸らして部屋に入ると詰め込み途中のダンボールの前に腰をおろした。
「……この前ね、久しぶりにお父さんと会って話したの」
母の口から父の話題を聞くのは、高校を卒業した俺が1人暮らしを選択した時以来だった。
あんなに憎み合って別れたのに普通に会っているのは意外で。
顔をあげて振り返ると、腕を組んだ母は照れ隠しのように肩をすくめた。
「ビジネスの話で会ったのよ。知り合いの弁護を頼まれたの」
「ふうん」
「でも、途中からあなたの話になった」
「……」
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