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シャーっと歯をむき出しにして怒る猫の前に腰を浮かせた格好で座り込み、
10歳になったばかりの俺はずっとそいつを観察していた。
母と訪れた保護猫の譲渡会は休日ということもあり、子供連れの家族の姿がちらほら見えた。
「その子気に入ったの?」
スタッフジャンパーを着たおじさんに話しかけられ顔だけを上げる。
「こいつ、すっごい怒っているけど、なんで?」
「あー、怒っているっていうより悲しいのかな」
おじさんの言葉が理解できずに眉を寄せると、彼は朗らかに笑いながら俺の隣で膝を折り、腰をかがめて猫の檻を覗き込んだ。
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