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探偵の心得とは
「……どういうことです?」
霧能もつられて真顔に戻る。
「だってさ、犯人はもう人を一人殺してるわけじゃん? バカな奴は、もうそこでタガが外れちゃうわけ。ミステリーで連続殺人事件が起きる時の理由知ってる? 最初の殺人を目撃した人の口封じとか、犯人を告発しようとした人の口封じとか、最初の殺人に比べたらどーでもいいことでやっちゃうのよ。もう、一人殺しても二人殺しても同じだー! ってなっちゃうの。とばっちりもいいところよ。ちなみに君、犯人知ったらどうするつもりだった?」
「えっと……もしかしたら、本人に確かめちゃうかもしれないですね……」
「だよね! 君、そういうタイプだよ! 飛んで火に入る夏の虫タイプ。もしくは、ゴキブリホイホイで捕まるGタイプ」
「どっちも虫ですね」
「ダメダメ、そんな人に犯人教えたら、絶対殺されちゃうもん。君のせいで無駄に連続殺人起こっちゃうもん。君、格闘技の心得ある? 俺なんか、常に犯人に命を狙われる可能性があるから万が一のためにちゃんとジム通ってるけど、君、何かしてる?」
「えっ……そう言われてみると、何もしてないです、ね」
「うわ、ヤバいよ君。明日からでもいいから体鍛えときな? 今気がついて良かったねえ! むしろ今まで無防備のままよく十年も生きてたよね。奇跡の人だよ、ヘレンケラーだよ」
そういうものだったのか。霧能は探偵の心得について、初めて知る思いだった。目から鱗だ。
「じゃあ、大沼さんは僕を危険から守るためにあえて犯人を教えてくれないんですね?」
「いや、めんどくさいから」
「そこはそうだと言えよ!」
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