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とことん秘密
霧能が大沼に殴りかかろうとした時、コンコン、と応接間のドアがノックされた。
大沼探偵と霧能は同時にドアを見る。
「誰だろう、こんな時間に」
「あ。もしかしたら鑑識係かも。証拠品の中でちょっと気になるものがあって、調べてもらっていたんだよね」
マッチ棒がぴょこっと起き上がり、ソワソワした様子でドアに向かう。何の気なしに目で追っていると、ドアを開ける手前で大沼が振り返った。
「明日のお楽しみだから、霧能くんは向こう向いてて! 聞き耳も立てちゃダメだからねー!」
「はいはい」
とことん秘密主義な探偵に呆れ、霧能は言われた通りに背中を向け、耳も指で塞いだ。
明日のお楽しみか。
大沼がいったいどんな推理を繰り広げるのか、確かに楽しみだ。
見た目はクソやかましいマッチ棒で性格も最悪だが、大沼の推理力だけは金田一耕助に勝るとも劣らないと霧能は考えている。今までもそうやって必ず事件を解決に導いてきたのだ。
そう、今までも、これからも──。
ズキュウウウウウウウン!
期待に胸を膨らませていた霧能の背後で、突然、鉛の発射される音がした。続いて、床に重たいものが落ちたような振動と、音が。
「おお……ぬま、さん……?」
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