24人が本棚に入れています
本棚に追加
エンドロール
こうして、名探偵大沼計の最後の事件は唐突に幕を閉じた。
犯人は結局分からぬまま、密室トリックもアリバイ工作も見破れぬまま、事件は迷宮入りになってしまった。
霧能はその後、大沼の遺言通り、ガスの元栓を確かめに彼の家に向かった。
元栓はしっかり閉まっていた。
「大丈夫でしたよ、大沼さん。あなたの近所でガス爆発は起きませんでしたよ……」
家の外に出て、光る青空を見上げ、霧能は頬に垂れてきた雫を拭き取った。
「おっかしいなあ。雨なんか、降ってないのに……」
青空に浮かぶ白い雲がマッチ棒のような形になり、誰かがそこで笑っているような気がした。
「最後に、犯人の名前知りたかったなあ……」
悲しい光を遮るためにサングラスをかけ、霧能は一人で歩き出す。
どこかにあるテリヤキバーガー味のうまい棒を求めて。
最初のコメントを投稿しよう!