「愛なんて所詮、飾りだよ」

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***あの子との日常*** 「それで屋上でご飯食べながら、なんだか意気投合したんだよね」  隣で横になるあの子が楽しそうに言う。  今さっきまでしていたのは、あの子と出会った頃の話。  あの子の安心できる笑顔は変わらないままだ。 「でも、よく引かなかったよね。俺、お前みたいなタイプの子は俺みたいな女の子にだらしがない奴が嫌いだと思っていた。俺の下心に気付いたら離れていくと思っていたよ」  俺の言葉にあの子は可笑しそうに笑う。 「なにそれ。まあ確かに、私は女の子にだらしがない人はあんまり好きじゃなかったよ。でもね、君の本質は噂と違って優しかった。それを敢えて表に出さない、そんな君に惹かれたんだよ。君の抱える孤独にも気付いちゃったしね」  柔らかい口調で話すあの子が愛しくて、そっと抱きしめる。  ――こんなに俺自身のことを見てくれるのは、きっとこの子しかいない。  そう思ってしまったから、俺は中々あの子を離せなかった。それがあの子を傷つけていると気づいていたけれど、あの子がいない世界など考えることもできなかった。 「こんな関係を続けて、どれくらいになるんだっけ」  俺が不意にあの子に尋ねる。あの子はしばらく考えてから、答えてくれた。 「確か、私たちが出会ったのは私が高校1年生のとき、君が高校2年生のときだよね。それで、そこからメッセージをやり取りするようになって、たまに遊ぶようになって……こういう関係になったのは、君が高校3年生で私が高校2年生のときだ。その頃、孤独を抱える君に気付いて、何とかしてあげたいって私が話を持ち出した気がする」 「ああ、そうだったね。あのとき、受験のストレスがあったり、他の女の子たちのいざこざに巻き込まれたりして相当ストレスが溜まっていたんだった」  俺が懐かしむように言うと、あの子がそっと俺にすり寄ってくる。そして呟くように小さな声で言った。 「あの頃の君を、私は救えていたのかな」  珍しく弱弱しいいあの子に、俺は迷いなく頷く。 「もちろん。今だって、お前に救われているよ。いつも、本当にありがとう」  俺が優しく言うと、あの子は嬉しそうな表情を浮かべた。  あの子の笑顔は出会った頃と変わらず、俺を癒してくれた。 「まさか、今もこんな関係が続くとは思っていなかったけどね」  あの子が楽しそうに言う。  俺もそれにつられて笑った。 「そうだな。もう、こんな関係を続けて一年だもんな」  その日、俺とあの子は笑い合って、二人の思い出話に花を咲かせた。
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