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倉庫の地下を流れる下水道で、ぴちゃりぴちゃりと雫が垂れる暗闇を、ネオは小型ライトを片手に歩いていた。
「車両が囮だということも知らずに、今頃慌てているだろうな……」
「……それはどうでしょうね」
ネオが声のするほうにライトを向けると、そこに銃を構えたリコが立っていた。
「リコ」
「あなたにはすべての戦術を教わったわ。脱出の際の陽動術もね」
「そうだったな……それでどうする? お前を育てたのはこの俺だ。お前の能力は知り尽くしている、勝ち目はないぞ」
「それはやってみないとわからないわ。以前の私とは違うから」
「ふん、そんな銃が通用しないのはわかっているだろう? お互いサイボーグ同士だからな」
リコはカランと銃を投げ捨てた。
「わかっているわよ。素手でやり合うしかないようね」
リコは腰を落とすと半身の構えをした。
「その構えは実戦向きではないと教えたはずだがな」
ネオは両腕を前に向け低く屈み込むとリコに突進した。正拳突きを繰り出すとリコはそれを右手で弾き、機械化された左腕を打ち出す。ネオはその腕を掴むと、ぐいっとよじった。メキメキという音とともに腕がちぎれる。
間髪入れずにネオが上段蹴りを入れると、リコは宙に浮きそのまま路面に叩きつけられた。倒れたリコの上に、ネオは馬乗りになると両腕を押さえた。
「完全サイボーグの俺に勝てると思ったのか?」
「あなたの弱点は自分の力を過信していること。一人で世界を思い通りに動かせると思っている。そこに隙が生まれる」
「この状況で吐く言葉とは思えないな。長い付き合いだったが……ここでお別れだ」
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