29人が本棚に入れています
本棚に追加
us against the world
渚を振り返る。俺の足跡もなく、夕暮れの中変わらない波打ち際が東へ西へ伸びてる。
当然だ。いくら踏んでも、どう踏んでも、ここに俺の足跡は残らない。
「帰るよー」
母親が小さな運動靴を手に呼ぶと、子供が痛そうに足踏みをしながら駆け寄る。
殺伐とした浜辺だけど、誰も俺に気づかない。
「ここにいるのに」
呟くと同時に海に細波が立った。
「お前は?」
イースターホリデー終わりの四月。俺たちは大学の新学期を迎えた。
それだけ。
ここ半年のめぐるましさと反比例する、あっさりすぎる近況だ。
――リオ
俺の名を呼ぶ声を思い出す。
もう終わった相手。
海の向こう……いや、もっと遠く。
海、大陸、そしてまた海を超えた先にいる、彼を思った。
「君も留学生……だったりする?」
九月。講義の後にそう呼びかけられた。
遠慮ないな。
そう思って振り返り、彼と目が合った。
最初のコメントを投稿しよう!