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いつだって側にはいる
「ねぇ、今どこに居るの…?」
彼女はいつもの様に部屋の壁にもたれ崩れながら、ボソリの呟いた。彼女のその目は虚ろで、生気が無い。毎日、職場や友人の前では気丈に振る舞っている彼女だが、一度自らのワンルームに戻ると、いつもこうなのだ。
部屋での彼女は趣味に興じるでもなく、食事もろくに取らず、ただただ虚無感に打ち拉がれるだけで、外の彼女とはまるで別人だ。こんな彼女の真実を様子を知る者はこの世には誰もいない。
「何でなの…?何でこうなっちゃったの…?」
彼女は不意に僕と写る写真の入った写真立てを手に取ると大粒の涙を流し始めた。これもいつものことだ。
そして、それにつられる様に僕の目からも大粒の涙が溢れ出る。だが、僕の涙は床に落ちるとパッと消えて無くなってしまう。僕の涙でさえも現世に存在する事は許されないからだ。
「あの日、ちゃんと約束したのに何で忘れちゃったの…?せっかくチャンスを貰っても、私だけが生き残ったって、意味ないじゃ無い…」
彼女は今宵も号泣して、一人で夜を泣き明かすだろう。そして、夜が明けると何事もなかったかの様に、また会社に行き、同僚や友人の前では気丈に振る舞うのだ。決して弱さは見せる事なく…。
そんな彼女を毎日毎日、見続けている僕の心はとっくにズタズタに引き裂けている。だが、この幽霊の身体では、いくら彼女の側に付いていたって、どうする事も出来ないのだから…。終
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