12.謝罪会見

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12.謝罪会見

 マイクを構える取材陣の中、カメラのシャッター音が響き渡る。 「大変申し訳有りませんでした」  壇上に並んで頭を下げている一同の中には、中年と若者の姿もあった。  取材陣があちこちで声を上げる。 「今、どんなお気持ちですか?」 「作業ミスだったそうですが?」 「日本中があなた達に感謝の気持ちを伝えています」 「結果的に多くの国民の命が救われました」 「どうか、頭を上げてください」  中年が、「ですよね?」と口にして顔を上げかけたが、隣に立っていた上司と思われる男に頭を抑えられ、再び深く頭を下げた。  昨夜、警報に反応した人々が、安全な場所に避難して警報が鳴り止むのを待っている中、燃え盛る炎で空は夕日の様に染まった。太平洋沖に落下した隕石の影響で、大型地震並みの揺れと津波が全国で観測されたが、避難が完了していたこともあり、被害は奇跡的に軽微なもので済んだ。  壇上の一同が着席すると、再び取材陣から質問が投げ掛けられる。  「昨日数万人規模のイベントが行われていた地域に警報が集中していましたが、あれには、どういった意図があったんですか?」  中年がマイクに向かって話し始めた。 「えー、小学生の頃の同級生が、、、」  別の男が中年の言葉を遮って、被害が大きくなる地域を予測して選んでいたのだと、もっともらしい回答を被せる。  その後、二人は全国の避難訓練に引っ張りだこの人気者となった。  二人が在籍する会社も、国民の救世主を抱えるセキュリティ会社として急成長を遂げた。  会社のCMが毎日のように流れ、二人の姿を見ない日はない。
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