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4.パスワード
テストは順調に進み、画面表示の確認も間もなく完了する。残るは、警報の動作確認のみだ。
「あ!」
「どうかしたんですか?」
「ログイン画面に戻ってる」
「えっ。テスト続けられないじゃないですか」
「まずいな」
「何がですか?」
「俺達のテストが長引けば、リリース作業に影響するかも知れない」
「大変じゃないですか」
「仕方ない。担当者に連絡とるか」
「携帯取りに行ったら、戻って来られませんよ」
「そうか、そうだったな。なぁ、部屋に資料が置いてあるって言ってたよな?」
「えぇ」
「アカウント管理表を探せ」
「なんでですか」
「パスワードの変更記録が残されているかも知れない」
「なるほど」
二人は手分けして、棚に並べられたファイルを取り出して、管理表を探している。
「ありました」
「貸してみろ。ほら、あったあった。パスワードが書かれてる」
ファイルにはパスワードの変更履歴が記された紙が挟まれている。その紙を見ながら、中年が端末に文字を入力していく。
「よし、ログインできたぞ」
「良かったぁ。それにしても担当の方、なかなか戻って来ませんね」
「人気の蕎麦屋なんだ。行列にでも並んでんだろ」
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