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5.奪い合い
都心のビルの一室。メインシステムが設置された部屋では、端末を操作する作業員の周りを大勢が囲んでいた。
「おかしいな。ログインしても直ぐに弾かれてしまいます」
「どういうことだ?」
「誰かに画面制御を奪われて、ログインからやり直しになるんです」
「制御を取り戻せ」
「やってます。ただ、相手もすぐにログインし直してしまうので」
山奥のマシンルームでは、中年が画面を覗き込んでいる。
「お、なんだ?ログインしても直ぐにログイン画面に戻るぞ」
「またトラブルですか?」
「報告しといたほうが良いかもな。ログインに問題があるって。ま、リリースが延期されても、うちの責任じゃないしな」
「ログインを繰り返してるだけじゃ、テストが続けられませんね」
「リモート端末の自動ログインが悪さでもしてるのかもな。よし、次にログインしたらパスワードを変更してみるぞ」
「良いんですか?勝手に変えて」
「しょうがねぇだろ。テストが続けられないんだから。後で戻しておきゃ大丈夫だよ」
ログインすると素早くパスワードを変更する中年。
「ほら、ログアウトしなくなっただろうが」
都心のビルの一室で、作業者が悲しげな声で告げる。
「あ、ログイン出来なくなりました。パスワードが変更されたのかも」
「どうなるんだ」
「パスワードが分からなければ、制御を取り戻せません」
「なに?乗っ取られたってことか」
「はい」
「誰がやってるのか調べろ!」
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