6.大雨警報

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6.大雨警報

 画面表示のチェックを完了させ、二人は警報の動作確認を始めた。  中年は操作端末の前に、若者は警報表示端末の前にそれぞれ座る。中年が入力した内容が、正しく警報として表示されることを確認するのだ。 「まずは気象情報からだな。大雨警報っと。なんだ、このテストケース」 「どうかしたんですか?」 「任意の値を入力して、出力が一致するかを確認しろって書いてある」 「何か問題でもあるんですか?」 「全部、自分で考えて入力しろって意味だぞ。普通は、入力値を用意しておくもんなんだよ」 「ま、サブのサブなんで、しょうがないんじゃないですか」 「ったく、手抜きしやがって。じゃ、適当に考えていくか。えーと」  住所を口にしながら入力していく中年。 「あ、出ました。局地的な豪雨情報。見たこともない降雨量」 「ははは。知り合いの家があるんだよ。あいつの洗濯物、今頃びしょ濡れだぜ」 「うわっ。性格悪いなぁ」 「性格悪いのは、そいつだよ。小学生の頃、俺の縦笛を隠しやがった」 「小学校時代の事を未だに根に持ってるんですか?」 「そいつのせいで修学旅行に行けなかったんだぞ」 「修学旅行?」 「笛を隠された2日後から修学旅行だったんだよ。だけど、俺と俺に笛を貸してくれた奴は、縦笛テストの翌日に高熱を出してな。医者に行ったらインフルエンザだって診断された。修学旅行には参加できないって母親に聞かされて、俺はずっと布団で泣いてたよ」 「先輩がうつしたのかも知れないじゃないですか」 「俺は、便所に行ったらきちんと手を洗うような子供だったんだ。俺が原因なわけないだろ」 「みんな洗いますよ」
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